ヘルベルト Herbertをうながして店を出ようとしましたが、彼はおじさんとまだ話しています。しばらく聞いていましたが、よくわからない話が続くので、
「さっき部品がないって言ってたよね。行きましょう。」と言うと、
「ちょっと待ってね。」と言うように目配せします。ヘルベルトは快活に話していて、二人の会話はだんだん盛り上がっていきます。ようやく話が終わり、サンダルを置いたまま出ようとするので、
「サンダルは?」
と聞くと、
「後で話すね。」
と小声で答えました。
店の外で彼はこう言いました。
「ええと、明日の10時にサンダルが受け取れます。彼がどんな仕事をするか見てみよう。」
「いったいどうしたの?」
「彼の言葉にハンガリーなまりがあったから、ハンガリー語で話しかけてみたんだ。うまくいったよ。」
言葉による交渉ごとが天才的にうまい人だなと舌を巻きました。彼はこのような困った状況になると腕が鳴るらしく、そういう事態を楽しんでしまうのです。
次の日、おじさんは「どうだ」と言うように、サンダルを出してきました。以前よりやや大きめのボタンでしたが、しっかり留めることができました。これはどちらにとっても気分のいい体験ではないでしょうか。今思い出しても愉快な気持ちになります。