2012年12月23日日曜日
「家族 不在と存在」
りくを初めて迎えに行った3人というのは、兄と私とヘルベルトです。
「お父さんが一番長い時間一緒に過ごすんだから、いっしょに行こう。」と言ったのですが、父は
「お前たちで行って来い。」
と言いました。おそらく父には子犬を選ぶことなどできなかったのだろうと思います。
父は時折、
「お母さんがいたら、りくはどんなにかわいがられたろうね。」
と言います。子供のころ飼っていた、我の強いお転婆犬でさえかわいがっていた母ですから、りくがどれほどかわいがられるか想像に難くありません。
楽しい時に或る人の不在を感じるのは、その人が家族だからであり、家族の中に生きているからです。一方で私は、母が生きていたら、りくを飼うことはなかっただろうと思うのです。変な感覚なのですが、りくと母はとても似ており、母がいなくなって代わりにりくがうちに来たような気がします。犬川柳に、「神様に行っておいでと言われてた?」というのがありましたが、「ああ、まさに」という感じです。
りくは兄の車が玄関につくと、「帰ってきたぞ」と全身でうれしさを表しながら家族に知らせ、迎えに行きます。その後茶の間で、兄にしかしない仕方で甘えます。兄の体に頭をつけ、1分以上、時には2、3分もじいっとしています。私には、1日あったことを話しているように見えます。その間、兄はずっとつきあっています。
りくに関して何かあった時の私の決め台詞は、「私が『この子です』と言って、りくがうちに来たんだよね。」です。(それゆえ私は、人を見る目はともかく、犬を見る目はあると言われます。)これには兄も黙ってしまい、「ん、まあ、それはそうだな・・・」と同意します。でも本当はそうではない、私たちがりくを選んだのではなく、りくが私たちを選んだのです。少し離れたところからじっとこちらを見ていたのですから。
父の口癖は、
「うちでは、一番小さい子が一番偉いんだよ。」と
「うちに来たからには、幸せになってもらわないと。」
です。私の目から見ると、時々「りくに甘すぎる!」と思うのですが、父は、私が一番りくに甘いのだと言います。
「なあ、りく、姉ちゃんなんかちょろいよな。」
家族を隅々までコントロールして、漁夫の利を得ているりくです。