2012年12月3日月曜日
「故郷の山はありがたきかな」
2010年 冬
この時期、雪を頂いた山々はこの世のものとは思えぬほど美しい。中学・高校時代、いくら自転車をこいでも進まない吾妻おろしに苦しめられた故郷の山が、年々かけがえのない大切なものに思えてくるのは年をとったせいでしょう。
年末年始に私の印象に残った番組はみなアスリートに関するものでしたが、それは日々の自己管理が端的に自己実現に表れる明快さのせいかもしれません。
第1はイチローの9年連続200本安打達成です。これに限らず、私は家でイチローのビデオを流しっぱなしにすることが度々あるのですが、だらけがちな状況でやるべきことをを自転車操業的に行うには、これくらいのカンフル剤が必要です。
第2は荒川静香のトリノ五輪金メダルに至る道のりです。勝負はリンクで滑る前に既に決していて、勝利に偶然はないことを物語っていました。彼女の自己決定の強靱さと聡明さに心打たれましたが、私がストイックな人に惹かれるのは自分がデカダンをこよなく愛し、彼らの自制心を絶対にまねできないからなのです。
第3は箱根駅伝を走った若者達の群像です。日々練習に打ち込んできた者だけが流せる汗と涙は、彼らにとって何ものにも代え難い人生の宝となるでしょう。きわだっていたのは5区で首位交代を成し遂げた柏原竜二です。走り以外は、木訥としてパッとしない福島の県民性を体現していましたが、「このスピードで最後までもつのか。」との素人の心配をよそに、まるで水を得た魚のように登り坂を快走しました。また、「ノー・プラン」というプランで彼を自由に走らせ、「目標に向かって鍛錬を積み、己を知る選手には、本人の気の済むようにさせるのが最上の策である」と、若くして達観した同県高校教諭出身の監督の采配も見事でした。山々に囲まれた土地で鍛えられた若者の活躍に、大いに沸いた故郷の正月でした。