2013年4月3日水曜日

「桃源郷」


 「福島に桃源郷あり」と言ったのは、写真家の秋山庄太郎です。彼がこう呼んだ福島市の花見山は、昭和の初期に或る農家が自分の楽しみとして、少しずつ花を植林して雑木林を花の山に変えたものです。「山を見せてほしい」という人の声に始めは困惑しつつも、こんな美しい山を自分たちだけで楽しむのはもったいないと、1959年に花見山公園として一般に開放されました。

 2月の梅、3月のロウバイ(蝋梅)、サンシュユ(山茱萸)、そして4月はソメイヨシノ、八重桜、レンギョウ、ボケ、モクレン、ハナモモ等が咲き誇り本当に見事です。すごいのは全く個人の私有地であるにも関わらず、無料で公開され、入園時刻や閉園時刻等もないことで、こんな現代の花咲じいさんが実際にいたとは・・・という感じです。つくづく、「ああ、私がしたかったのはこういうことだった」と思ったことでした。

 21世紀に入り入園者が20万人を越えるようになると、さすがに「花見山環境整備事業」が動き出し、「NPO花見山を守る会」やボランティアの活動も活発に行われているようです。震災前年は32万人の人出があったとのことでしたが、昨年は養生という理由で公開されず残念でした。今年は1年ぶりに一般公開されるため、市民の喜びはひとしおです。花見山だけでなく、この周辺地域が京都の大原を彷彿とさせるような里山の風景なのも気持ちを和ませてくれます。ただ、それだけに道に迷いやすいので注意が必要かもしれません。いや、シーズン中は迷いようがないくらいの人出でしょうね。