2013年4月19日金曜日
「刺繍生活 その後」
私は課題の刺繍用品を前に、家で途方に暮れていました。一つはっきりしているのは、このまま図案を見ながら刺していくのは限界があるということでした。なにしろ15個ある同じパターンの1つ1つが、ざっと見て300目近い刺し目でできているのです。しかも微妙に左右対称でない部分があり、脇にある別の囲み模様からの目数も場所によって違っているので、図案を見ながら一つ一つ刺していったのでは必ずや間違いが起こるでしょう。さらに、基礎を知らないとは恐ろしいことで、図案を正確に読み取ることすら私には難しかったのです。
まず、全貌を頭に入れることがどうしても必要でした。これをしてからでないと取り掛かれません。先日数十目やってみた時、先生が刺された見本には、基本となるラインとか、重要な角の部分とかの位置取りが一目の狂いもなく、かつ必要な分だけ過不足なく示されていたのに驚嘆し、思わず、「ははーっ」と平伏してしまったのでした。先生はすごい!
考えた末、まずパソコンで大きく色別に入力したパターンの図案を作りました。それからそれがどのようにつながるのか俯瞰できる様式の全体図を作り、ようやく実際の作業に取り掛かることができたのです。一年どころか二年がかりでという励ましもありましたが、冗談ではありません。私の性格ではそんな長期戦に耐えられるはずがない、短期決戦です。大きく拡大した図案のおかげでなんとか進めることができましたが、しばらくすると何度やってもどうしても一目合わない箇所が見つかり行き詰ってしまいました。「ええい、誤魔化してしまえっ。」という悪魔の声が聞こえましたが、再度目を凝らしてみると、単純な囲み模様の目数が、他は全て3目ずつなのに中央だけなんと4目! これを気づけというのは過酷な要求です。ともかくも、一週間ほど他のことを全て放り出して一心不乱に取り組み、ようやくこうすれば過たずできるだろうという見通しに達したのでした。
それでもちょっと油断するとすぐに段がずれてしまい、端に達した時に「ああ~、一目ズレてる・・・」と茫然とすることが何度あったことか。なぜ、こんな課題に取り組まなくてはならないのかということは一切問わないことにしてやり続けてきた結果、まだまだ終わりそうにないものの、最初ずだ袋のように見えた粗い麻布にもしみじみと愛着が湧き出てくるのでした。そのうち糸がなくなり先生に調達していただく間、「休みを与える」と言い渡され、現在小休止中・・・。というのも、糸など型番と色番がわかればすぐ手に入るものかと思っていたのですが、先生によればこの糸がまだあるかどうかわからないとのこと。聞けばこの課題は先生が刺繍学校に通っていた時の課題であると! いつの時代のものかもさることながら、「そんな貴重なものを・・・。」と仰天してしまったのでした。ともかく、目数との闘い第2ラウンドに備えて休養をとっておかなければ。