2013年4月18日木曜日
「低温スチーム」
シャトル・シェフで野菜を蒸した時の驚きを忘れられません。野菜が甘いのです。思わず、「うーん」とうなってしまいました。低温スチームという料理法があることを知ったのはもっと後なのですが、一度沸騰させた鍋を魔法瓶で保温するシャトル・シェフは、図らずもこの料理法にかなっていたのです。
食品事典によると、例えばさつまいもの甘みは70℃くらいで最もよく引き出されるとあるので、15分ごとに少し過熱して保温するのを3回繰り返したところ焼き芋と同じ黄金色のおいしさになりました。これはでんぷん糖化酵素アミラーゼの働きによる効果です。ちなみに、食品事典には「さつまいもは寒さが苦手なので冷蔵庫での保存は厳禁、新聞紙の包んで室温で保存」と書いてありましたが、私見ではこれは寒い地方の話です。冬でも室温十数℃の東京の場合、私はさつまいもを冷蔵庫で保存していましたが、それはそうすると甘みが増すことを経験的に知っているからです。寒さに抵抗しようとして糖度が増すのです。
バナナの場合は50℃のお湯に10分つけると糖度が増し、日持ちもよくなります。この場合さつまいもとは逆に、熱さに負けまいとして糖度が増すのでしょう。違うかもしれませんが、バナナが育つ地域ではどう考えても、雪が降るような寒さに備えるより、猛暑に備える能力を伸長させた方が生き残りに有利なはずです。
これらの野菜の調理法は大変に面白く教化的です。これら全ての事実が物語る真理は何か。それは、「生き延びるために個体に必要なのは適度なストレスである」ということです。これはおそらく、あらゆる生物に当てはまる法則のはず。難しいのは「適度な」の部分、野菜で言えば、加える熱が高すぎてもダメ、ちょっと低くてもダメ(43℃以下では雑菌が繁殖する)。まさしく人間に置き換えて考えると納得できます。いやあ、農産物から学ぶことは奥が深い。