2013年4月26日金曜日

「今ふたたびのジパング」


 ジパングという呼び名は日本人の虚栄心をくすぐる言葉のようで、最近よく聞きます。なにしろ黄金の国として過去の希望に輝いていた時代を彷彿とさせるからでしょう。イスラム圏では日本についてのテレビ番組が放送されたことをきっかけに、日本ブームだと聞きます。日本は「イスラムの教えがこの世で最も実現されている社会」と評した人もいるほどで、その精神性に注目が集まっているようです。

 エルトゥールル号事件以来、トルコはずっと親日的な国ですが、珠算教室がトルコに進出し習っている子供がいるとのこと。初めてこの話を聞いたとき、「このご時世にそろばんとは・・・」と笑ったのですが、よく聞いてみると、数ある塾の中でそろばん塾に子供を通わせている親は、計算術だけでなく日本の文化や精神に触れてほしいという願いを持っているのです。いわく、「『日本』というのはブランドなのです。」と。

 また、ベトナムで豚の飼料の販売を新たに始めた企業が、圧倒的に欧米資本の牙城で企業努力をしながら売り込みをかけ契約を取っていくとき、農家が言った言葉はこうです。
「契約したのは日本の企業だから。ベトナムでは日本はとても信頼されています。」

 こんにち、様々なものが様々な値段で売られています。似たジャンルのものを手に入れようとした時、人はどういう考えでそれを選ぶでしょうか。グローバル社会で一番よく採用される方法は、一円でも安いものを選ぶ方法です。しかし、これは完全に同じ物という場合で、たいていはちょっと違いがあるものなので、誰が作っているのか、どこから買うかということも大事な決定要因になるでしょう。

 これは人間同士の場合を考えればはっきりします。誰かと組む時には相手の人柄が何より大事です。今までの体験から、うまく言えないけれど、なんとなくずるい感じがするとか、土壇場でどうでるかわからないとか、相手の人柄に一抹の不安がある場合、技術的には劣るけれども人間的に信頼できる人と組むということはいくらでもあります。相手に対する信頼が根底にないと不安が際限もなく広がっていき、何かあったとき致命傷となります。相手が信用できれば、何かあっても最大限の尽力を当てにでき、たとえ結果がうまくいかなくても納得できるのです。人間の場合と同様に、もしそんな風にして「日本」というブランドが選ばれているとしたらそれこそ名誉なことで、鉱物資源としての金以上に価値のある、黄金の国ジパングと言えるのではないでしょうか。