2013年3月9日土曜日

「若い人の幸福感」


 或る番組で、最近の若い人は7割が「今幸福だと感じている」という話を聞いて、「へえっ」と意外な気がしました。若者がどんな時に幸福と感じているかを知ると、さらに驚きが増しました。いわく、「家でまったりしている時」「好きな人と一緒に家事をしている時」「特別なものではないがおいしい物を食べた時」「好きなことをしている時」「朝起きて『さあ一日が始まるぞ』と思う時」などで、私自身の感覚に非常に近いものだったからです。その親の年代が「ブランド品を手に入れる」「外車を買う」「高級レストランで食事する」「大きな家を建てる」「世界一周のクルージングに出る」などを幸せと考えていることに比べたらずっとまっとうな幸福感です。

 評論家が「このような若者が増えては日本は滅ぶ」というようなことを言っていましたが、とんでもないことです。自分の生活水準が下がるのでそれでは困るという人はいるでしょうが、将来を悲観してうつ病になったり、自殺したりする若者が増えるよりずっといい傾向です。

  ただ、幸福感が希望や欲望の達成に依拠しているとするなら、これから人生が始まるような若い人とおおかた人生が終わった年配の人の幸福感がほぼ同じというのは、確かに少し憂慮すべきことかもしれません。若い人に宿る爆発的なエネルギーはどこかに行き場を求めているに違いなく、それ自体がなくなってきているとは思えません。

 何かに憧れたり好奇心を持ったりするというのは、未知のことを知りたいという動機が大きいはずですが、未知のことに挑む気持ちが削がれるのは、インターネットで得た情報からすでにそれを体験した気になって、先が見えてしまうことにも一因があるように思います。しかし、他人の体験を知ることと自分で体験することは全くの別物ですから、不安はあるでしょうが体当たりで経験を積み手ごたえを掴んでほしいものです。

 お金が唯一の価値基準となって長い時が過ぎ、ようやくそうではないと考えるようになった若い人々に希望を寄せつつ、若者らしい挑戦に期待したいと思います。