2013年3月23日土曜日

「流行の顔?」


 目が悪いせいなのでしょうが、ここ2年ほど最も勢いのある俳優Hと最近よくメディアに出る新進気鋭の社会学者F及びクイズ番組で見かけるシェフKの顔が、私には一卵性双生児のようにそっくりに見えます。この三人は、いま流行の顔なのでしょうか、区別がつかないのは私一人なのでしょうか。

 そんな疑問を持ったまま、なんとなく誰にも聞けずにしばらく過ごしていましたが、聞かなくてよかったかなと思うようになりました。人間は人の顔の認識に関してものすごく敏感であると言われます。これは新生児からの特技と言ってもよく、赤ちゃんが最も嫌うのは無表情な顔だと聞いたことがあります。自分を守ってくれる人の表情を読み取ることが赤ちゃんにとって死活的に重要なことなのですから、そのために発達させてきた能力なのでしょう。

 それで思い出したのですが、今から十年ほど前に生徒が或る俳優のことを「かっこいい」と学級日誌に書いていたのを読んで、驚いたことがありました。驚いた理由は、その俳優が私には「かわいい」と言うしか形容の言葉が見つからない若造だったためです。友人にその話をし、「20代の男は全て『かわいい』っていう範疇だよね。」と言ったところ、彼女は「私なんか30代もそうよ。」と答えたので、それはそれでまたびっくりし、同時に含み笑いを禁じ得なかったのでした。

 そのあたりから推論するに、件の三人の顔の区別がつかないということは、その個体にとって区別する必要のない範疇に彼らがいることに他なりません。年をとったということが生物学的にも立証された事象なのでした。