2013年3月16日土曜日

「山歩きの教訓」


 ひょんなことで出会った刺繍の師匠が青梅にお住まいと聞いて、咲き誇る一山全部の梅林の美しさとともに30年近く前の記憶がよみがえりました。

 仕事に就きたての頃、西多摩の果てに赴任した私は休日によく山歩きをしました。数年間で奥多摩と山梨の山をほぼ歩き尽くしましたが、その間二度道に迷ったことがありました。遭難せずに済んだのは、十歳前後の数年間父から山歩きの手ほどきを受けていたためでした。

 山で道がわからなくなったら、すべきことは一つしかありません。わかるところまで戻るのです。あとはそれができる体力が残っているかどうかだけです。戻って冷静にあたりを見渡すと見えなかった道が見えてくるのです。なぜ見落としたのかと思うほど明白な道でした。

 青梅に住んでいた数年間は、つらいことと楽しいことが100対1くらいの割合で起こった時期でしたが、懐かしい記憶として思い出されるのはうれしいことです。