2013年3月12日火曜日

「憧れの修道院」


 ヨーロッパにはまだ修道院が数多く残っていますが、観光客に公開され見学できるところがかなりあります。私は修道院と聞くとゾクゾクするくらい好きなのですが、ヘルベルトは自身が以前1週間くらい休暇をとって、修道院にこもったことがあるとのことで、旅行中近くに修道院があるとわかると、よく見学に連れて行ってくれました。

 コブレンツKoblebzに近いマリア・ラーハKloster Maria Laachはロマネスク様式の美しい建築と園芸で知られ観光客でにぎわっていますし、シュトゥットガルトStuttgartに近いマウルブロン Kloster Maulbronnは中世の修道院の姿を完璧な形で残しているといわれる世界遺産です。アーチ形の影を落とす回廊はえも言われぬ静謐に満ち、朝な夕なにここを歩きながら考えを巡らせば、私でも思索が深まりそうな気がします。

 しかしなんといっても有名なのは、ミュンヘンからウィーンに列車で入る途中で目に飛び込んでくる、まさしく絵のように壮麗なメルクStift Melkの修道院でしょう。木立に映えるマリアテレジア・イエローのこのバロック建築は、思わず息を呑むほどの美しさです。一度行ってみたかったのですが、ある時、車で旅行中にメルク近くで夕方になったので宿泊することになり、希望がかないました。この辺りはサイクリングで旅する家族や集団向けに、それ用の宿がたくさんあるようです。

 さっそく修道院見学をしました。疑いもなく歴史的価値のあるすばらしい建造物、また聖遺物や美術品の展示がありましたが、私のイメージとはかなり違っていました。なんというか、金ぴかで全体的に明るすぎたのです。見事な天井画で有名な万巻の書物をおさめた図書館は、他の部屋と比べれば薄暗かったのですが、それでも私には明るく華やかすぎると感じたほどです。「薔薇の名前」の若い修道士がメルク出身ではなかったかと思いますが、あの無彩色の世界の印象が強すぎたのでしょう。

 ハンガリーでは、やはり世界遺産のパンノンハルマPannonhalmaを訪れました。こちらも壮麗なることこの上なく、30万冊所蔵の図書館のすごかったこと。ガイドツアーの話し手はとても若い神学生で、私たちがエステルゴムから来たと言うと、エステルゴム大聖堂の塔とここの塔が似ているのは設計者が同じだからと教えてくれました。ただ、夏とはいえTシャツに短パンという服装はどうなのか。今どき、映画の中のショーン・コネリーとクリスチャン・スレーターのような修道士姿を期待する方が間違いなのでしょうか。