2013年3月4日月曜日

「紅春 16」


 「そろそろお父さんに電話しなくちゃ。」
一週間ほど間があくと、私は父に電話します。いつも決まって夜7時頃です。父は電話に出るとすぐに、
「あー、待って、来た来た。」
と言ってりくに代わります。その時間の電話は私からとわかるようで、りくは別の場所にいてもやってくるとのこと。父が受話器をりくの耳につけているので、私が一方的にしゃべります。

「はい、受話器なめてます。」(もしくは、「はい、電話線なめてます。」)
と、父の実況中継が入ったあと父と話します。いつも用事は特にないので雑談です。話が終わると父は、
「もう一回ね。」
と言って、再びりくに代わります。りくとしゃべっている方が長いくらいです。
毎回繰り返される出来事なので、今ではこう言うようになりました。
「あー、そろそろ、りくに電話しなくちゃ。」