2013年3月21日木曜日

「使命感を持つ人」


 「東日本大震災関係の映像やテレビ番組は全部録画してあるけれども、つらくて見られない。」と友人が言っていたのは、震災1年後のことでした。よくわかります。「忘れない」と誓うのは、人間はつらい記憶を忘れたいからなのです。

 先日意を決して、君塚良一監督の映画「遺体」を見に行きました。ご遺体を収容する仕事にあたられた人々にとってまさに地獄の10日間であり、どんなにお辛かっただろうと胸が痛くなりました。それは、葬儀社務めの経験を持つ元民生委員の方が遺体安置所のカオス的状況に接し、亡くなった方を人間として葬り、ご家族の悲しみにぎりぎりまで寄り添おうとした記録でした。これをしない限り、人間の魂は決して癒されることがないのです。

 こういう局面では人が一人でできることは多くなく、様々な分野の人々がつながらないと何も進みません。しかし、それは最初の絶望的な状況の中で、「自分一人でもやる」という使命感にかられた人が現れて初めてできることなのです。極限状態の中でそのような人が現れた共同体には、或る意味、救いがあることを知らされた映画でした。

 主演の西田敏行という人は、おそらく震災以来ほとんど休みのない状態で働いていることと見受けられますが、この人もまた、使命感に突き動かされているに違いありません。

「慰めよ、わたしの民を慰めよとあなたたちの神は言われる。」(イザヤ書40章1節)