2013年2月28日木曜日

「レントの季節」


 あらゆる祝祭を自家薬籠中のものとしてしまう日本の習俗も、年によって移動するイースターだけはまだ取り込めていないようです。イースターは西方教会では毎年3月22日から4月25日までのどこかにおさまっていますが、年によって1カ月も違ってしまうのでは歳時記に取り込みにくいのでしょう。

 クリスマスでさえ、「教会でもクリスマスをやるんですね。」と言われたという笑い話があるくらいですから、イースターはもはや何のお祝いかわかりっこないでしょう。2010年から東京ディズニーランドでも、春季スペシャルイベントとして「ディズニー・イースターワンダーランド」を行っているようですが、昨年は4月3日からなんと6月30日まで開催! こうなると春季でさえありません。笑いとあきれを通り越して、さすがにこれではまずいのではと思えてきます。

 ヴェニスやリオデジャネイロのカーニバルは、戒斎の時として質素な生活に入る聖灰水曜日前に祭りが最高潮に達することでよく知られています。イースター前の46日間はレント(四旬節)と呼ばれ、キリストの受難と死に思いを寄せて過ごす期間です。

 私は勤めている間、このレントをまともに守れたためしがありませんでした。日本ではこの時期がすっぽり送別会や歓送迎会のシーズンであり、お世話になった方々にお別れしたり、新しくいらした方にご挨拶する会に出席しないわけにはいかなかったからです。そもそも日頃贅沢な食生活をしているわけではないのに、よりによってこの期間に限って飲めや歌えや状態になってしまうことに、なんとも複雑な気分でした。ようやく心置きなく質素に、レントの時を過ごせるようになりほっとしています。