2013年2月7日木曜日

「祈りの場」


 ヨーロッパを旅していて気づくのは、どんな騒々しい繁華街でも、ほぼ無音といってもいいような空間が存在することです。

 フランクフルト Frankfurt で言えば、最も観光客の多い市庁舎のある丘 Römerberg のすぐそばに、聖母教会 Liebfrauen があります。ヘルベルトの母教会でしたから渡独するたびに何度も訪れましたが、一歩入ると市街の雑踏がうそのように静かな場所でした。(今、念のため、愛用していた「地球の歩き方」を見たところ、市街地図に載っておらず、何かの間違いではないかと思ったのですが、「そっとしておいてほしい」という市民の気持ちの表れなのかもしれません。)

 また、フランクフルト国際空港には、祈りの部屋 Prayer Room があり、どんな宗教のどんな人にでも開放されています。私がそこを訪れたのは数えるほどしかありませんし、そこに先客がいたのはさらに少ないのですが、あのような場所は必要なときには絶対に必要な場所なのです。

 日本では宗教的な施設は難しいでしょうけれども、街中にちょっと腰を下ろしてほっとできる無音の空間があれば、ほんのひとときでもどれほど心が休まることでしょう。上野は東北人にとってある種の聖地であり、美術館のまちでもありますから、小さなものでよいので商業的なものでない、絵画のある小さな無音の空間を駅の構内に作れないものかと思い、震災後、駅に手紙を書きましたがまだ返事はありません。