2013年2月23日土曜日

「栄養ドリンク」


 私は清涼飲料水というものをほとんど飲まず、普段はコーヒーとせいぜい牛乳を飲む程度です。コーヒーは朝起きて飲みたければ健康、体調の悪い時は飲みたいと思わないというように、健康のバロメーターになっています。

 3年ほど前、連れ合いが亡くなった時から、嘔吐の発作が頻繁に起こるようになり、脱水症状で2度入院しほとほと懲りました。2~3週間おきに起こる発作自体は止められないものの、入院しなくてもすむ方法は経験によって体得しました。それは、夜中に突然始まりまるで精密機械のように30分ごとに10回ほど繰り返す発作時に、体から出た分だけカルピスを補給するというものでした。「人の体に近い水」として有名なサプリ系飲料水も試しましたが、全く体に合わず一度でやめました。発作は起こる間隔が少しずつ長くなってやがて怒らなくなるまで1年ほどかかりましたが、この時期は「カルピスが命を救う」といっても言い過ぎではないくらいお世話になりました。

 一度発作が起こると何も食べられないので一挙に体力が落ち、回復までにさらに一週間かかるという有様でしたから、仕事にはさまざまな支障をきたしました。困るのは、回復して2~3週間後にまた発作が起こるということがわかっていても、実際いつ来るかはわからないので出張等でその日をはずすということができないことでした。夕飯までは普通に過ごせていても夜中に突然発作が起こり、結局一睡もできずに憔悴しきって朝を迎えるということが繰り返され、どうしても無理な時は出張を代わってもらったこともありました。

 ある時、生徒一人を引率することになっていた日にそういう事態になり、長期休暇中であまりに急なため誰かに代わってもらうこともできず、とりあえず行ってみるしかないと早朝座れる時間帯の電車に乗りました。目的地の駅に到着できましたが、何も食べていないどころかエネルギー源は体内からすべて出ていましたので、消耗しきって駅のベンチにストンと座ったまま全く動けませんでした。せっかくここまで来たのに万事休すかと思いましたが、ベンチの隣に自動販売機があり、紙パックのコーヒー牛乳があるのがわかりました。不調の時はコーヒーなどもってのほかなのですが、飲んでみようと思い一口試してみると、「冷たくておいしい」と感じました。少しずつ飲んで様子をみると、驚いたことに全部胃袋におさまったのです。少しすると立ち上がることもでき、無事職務を終えることができました。

 或るコーヒー牛乳の原材料名は、乳製品、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、コーヒー、デキストリン、香料、乳化剤とあり、要するに砂糖のかたまりです。栄養に関する専門家でなくても体によくないとわかりますが、人の体というのは本人にしかわからないしかたで動いており、この時は確かに栄養剤として働いたのです。

 それ以来私は、一般的には体によくないものでも、たまに飲みたい、食べたいと思えばそうすることにしました。食に関してはある程度臨機応変にそして鈍感になるのがいいのかなと思っています。