2013年2月15日金曜日

「被災地ドライバーの民度」


 イギリスの道路交通ルールでなるほどと思ったことの中に、ラウンド・アバウトがあります。もう20年以上も前のことですが、日本と同じ右ハンドルの国だからとレンタカーを借りて運転した時のことです。交差点にあたる部分が丸い花壇をあしらった空間になっており、「えっ、これは何?」と思う間もなくその円環に入り、前の車にならい、目的方向に向かう円環の切れ目で左折していました。円の周りを回らせることが自動的に交通整理となり、どの方向からでも入れ、どの方向へも車の流れを止めることなく走らせることのできる効率的な方法です。守るべきは、「右から来る車が優先でそれが途切れた時に注意して入ること、中で止まらないこと(流れに乗ること)」くらいでしょうか。

 しかし、この道路交通システムが機能するには、このルールを全員が守れることが絶対条件です。それは社会の成員の質にかかっています。それからもう1つ、見落としがちですが、車が多すぎないことも必須条件で、これは社会的環境の質にかかわります。

 東日本大震災が起きた時、福島市の道路交通は非常にスムーズでした。停電で信号が消えていたにもかかわらず、夕刻の時間帯でも普段より少し時間がかかった程度で家にたどりつけたと兄は言っていました。ドライバーたちは交差点の道路の状態を一瞬で判断し、突っ切れる時は突っ切り、譲るところは譲って、事故もなく、あうんの呼吸で動いていたと言います。それぞれが帰宅を急ぐ理由は痛いほどわかっており、焦る気持ちの中でも頭は冷静だったのです。ここには、皆が交通ルールを守る以上の民度が必要で、図らずもそれが発揮された事例となりました。翌日大渋滞が起きたのは、「警察が交通整理を始めたから」というのは、必要なこととはいえ、なんとも皮肉な話です。