母によれば、私はいつもニコニコご機嫌の赤ちゃんだったそうです。子供の頃、私が母に言われた言葉に、「あなたは他人をうらやましがらないからいいわね。」というのがありました。他人をうらやむということがどういうことなのか私にはピンと来ませんでした。絶対にその人にはなれないのに他人をうらやんで何になりましょう。
他人と比較せずに自分を顧みれば、自分がどんなに幸せかという事実はたくさん見つかるし、たまたま与えられたにすぎない幸運をありがたく思うと同時に、その気持ちを社会に還元する方法を考えることもできます。人生の様々な場面で出会った人の中には、本当に頭の下がる仕方でなすべきことに誠心誠意打ち込んでいる方がたくさんいました。実際そのような多くの人々によって社会は支えられているのです。
逆のやり方として、クレームをつけて社会を変えようとする人もいますが、あまり幸せそうでないのは、クレーマーにとどまる限り不幸であり続けなければならず、それが心を荒廃させていくからではないでしょうか。それよりはるかに現実的で実り多い仕方で生きている人、すなわち人間的に成熟した尊厳をもって奮闘している人に心からの敬意を払いたいと思います。