2013年2月2日土曜日

「紅春 12」

犬にもいろいろな性格の犬がいるように、猫にもいろいろいます。
りくには敵対心というものがないので、知らない相手に考えもなしに近寄って行きます。猫の後を追っていき、土手の階段の上で待ち構えた猫から猫パンチを食らっても、何が起きたのかわからず目をぱちくりさせたりします。

 夜、家の庭で猫が鳴いている時は怒って吠えますが、猫がきらいなのではなく、縄張りを荒らされるのが嫌なのです。りくはりくで家を守っているのですから。いつまでも止まないと兄が、
「りく、悪い猫を退治しに行こうねー。」
と言って、りくと一緒に出かけていきます。何をするわけではありません。一回りパトロールすると、りくは安心するのです。

 良好な関係の猫もいます。散歩中、通りがかりの人が、白と薄茶まだらの小柄な猫がりくと一緒にいるのを見て驚いていました。
「猫、逃げないんですね。」
「あの子たち、知り合いなんですよ。」
「知り合い・・・」
「ええ、お互い知り合いなんです。」
他に言いようがなく、同じ言葉を繰り返しました。別に仲がいいわけではないのですが、猫も気がいい子なので、りくに対して「なによっ。」という仕草で身を引くものの、くんくんにおいをかがれている間、じっとしています。動物にも知り合い程度の付き合いというものがあるのです。