先日、ネット上で子供の頃に読んだ推理小説を尋ね求めている人を見つけ、「ああ、ここにも迷える小羊が・・・」と思いましたが、回答者の答えはずばり「少年少女世界推理文学全集」(あかね書房)です。あの推理文学全集のうち一冊はほとんどの子供が手にしたことがあるのではないでしょうか。
何しろ幅が広い。推理小説の大家クリスティやクイーン、ヴァン・ダインはもちろん、一応ホームズ、ルパンもあったし、ポオの怪奇小説、ハメットやチャンドラーのハードボイルド系、文学者というべきチェスタトンやモーム、スティーブンソン、さらにロシアのアシモフやベリアーエフ等のSF系までカバーしていました。この全集により、推理小説の好みが決定づけられた子供も多かったことでしょう。
好みが一番別れたのはチェスタトンでしたね。私が先に読んで「おもしろかった」と友達に言ったら、あとで「どこがおもしろいのかわからなかった」と言われて軽いショックをうけたことを思い出します。
どうしても忘れられない(話の中身は全部忘れましたが、なんかもの悲しい話だったということだけ忘れられなかった)のは、プーさんシリーズを書いたをミルンの「赤い家の秘密」でした。最近Gutenbergで読んで(聴いて)みましたが、最後の手紙での告白の中で、復讐のために殺した相手のことを、「マークがいなくて今夜はさびしいです。おかしいでしょう。」と締めくくる部分で記憶が鮮明に蘇りました。やはり悲しい話でした。その後10年ほどで同出版社から出た「推理・探偵傑作シリーズ」にはこの本は見当たらないようです。なんと幸運な時期に子供時代を送ったことでしょう。