誰でもお気に入りの図書館をもっているものでしょうが、理想はちょっと歩いて行ける距離にあることでしょう。残念ながら私の家の近くにはそういう図書館がないので、この際いろいろな図書館を見学してみることにしました。「今日は図書館に行く」と思うとそれだけでもう幸せな気分になります。
港区の図書館はほぼ全部見学し大変気に入りました。9時からやっていますし、閲覧席も充実していて気持ちよく過ごせます。
三田図書館は田町に近いので利便性にすぐれ、勤め人もちょっと立ち寄ってよく利用する活気のある図書館です。
赤坂図書館は青山一丁目近くの新しいビルの中にあり、明るく広い館内に個別の電気スタンドを備えた机があり、近くの有閑族が朝からやって来ます。
高輪図書館は白金高輪という場所がらかゆったりした雰囲気を醸し出しており、同じコミュニティセンタービルを利用する子育て中の母親をよく見かけます。一度電子メモ帳にキーボード入力をしていて注意を受けたことがありますが、これはそれ専用の場所があることを知らずにいた私のミスで、最近は特にパソコン使用に関するルールを確実に把握しておく必要があります。
みなと図書館は緑に囲まれた御成門にあり、芝公園も近いので読書に飽きたら森林浴ができるという恵まれた環境です。電車でのアクセスとしては都営三田線のみのせいか、利用者は近くの人が多いようです。
港区の図書館として唯一バスを使わないとアクセスが難しいのは港南図書館です。それだけに静かで閲覧席もゆったりと使えほっとします。入口手前の中庭には、日差しや雨を避けられる大きなひさしのある空間があり、そのベンチに座って気晴らしもできます。これが中庭を取り囲む回廊のようになっていたら修道院のようで最高なのですが。
文京区の図書館もほぼ訪れましたが、ここでは図書館ごとに収集に力を入れている分担分野を決めているようです。その分他の図書館からの本の取り寄せを迅速に行ってくれます。文京区の図書館は、どの図書館も都バスの停留所から徒歩ですぐというアクセスの良さがありますが、閲覧席は少なめで、比較的広いスペースをとっているところでもおおむね大きなテーブルにみんなで座る形態となっています。
図書館にはそれぞれ個性があり、そこが図書館であるというだけで十分なのですが、贅沢を言えば、図書館の快適さの基準はなんといっても静けさにあります。したがって運営側の意図に反することなのでしょうが、閑静であること、すなわち人があまりいないことは図書館の重要な属性の一つだと思っています。或る国立図書館の関西館はどうあっても車でしかアクセスできない位置にありいつも空いていると友人に聞きましたが、それでいいのです。こういうものはやはり必要で、費用対効果で考えてはならず、いわゆる事業仕訳の対象にしてはならないものだと思います。
その点で言うと、断然理想的な図書館は大学の図書館です。8時半から開いているという図書館は他に知りませんし、静かなことこの上なく、パソコンを使えるスペースも十分あり、また学部の書庫というべき図書館では、もはや薄暗い修道院の図書館かと錯覚するほどで時を忘れます。お昼は学食に食べに行き、適当に散策してまた図書館に戻る、これ以上何を望みましょうか。本を貸し出してもらえないのは残念ですが、学生や研究者の邪魔になってはいけませんから当然でしょう。手ぶらで行ける私設図書館と思えばいいのです。