2013年2月25日月曜日

「紅春 15」


 りくがまだ子犬の頃のことです。久しぶりに帰省し、滞在中に買い物に出かけて帰ってきた時、父が言いました。
「もう、りくには参った。」
私のいない間、ずっと父にまとわりつき、ぐずぐず何事か言っていたとのこと。訴えの中身は、
「姉ちゃんがいなくなったから探して。」
「いなくなったんじゃなくて、買い物に行ったんだよ。」
と言ってもわからず、帰るまでずっと訴えていたので、ほとほと困ったそうです。

 それからは、必ず買い物に行くことを告げ、勝手口から出るようになりました。玄関から出ると、しばらく旅に出る(=いなくなる)のだなとりくは理解するのです。3時間くらいのお出かけは許容されますが、それ以上長くなると、帰った時、「遅い!」と言って怒ります。ですから、気分を変えさせるためにそのまま散歩に出るのが習いとなりました。

 私は夜に外出することはまずないのですが、先日はクリスマスイヴ礼拝のため夕方出かけました。りくは4時ころから台所に行ったまま、勝手口の前でお座りしていたとのこと。
「まだ、当分戻って来ないよ。」
と父に言われてもりくは聞く耳を持たなかったそうです。私が7時過ぎに戻ってドアを開けると、果たしてりくはそこにいました。それからが大変、私は「帰りが遅い!」と叱られ、夜だというのにりくの機嫌をとるため散歩に出る羽目になったのです。