2013年1月23日水曜日

「記憶のツボ」


 人の記憶に関して私が経験的にわかっていることは2つしかありません。
1つは、誰もが思い当たるように、名前よりも顔や声の方が記憶に残るということで、見覚えのある顔、聞き覚えのある声、でも名前は思い出せないということが日常茶飯事です。

 もう1つは、人それぞれ記憶のポイントがまるで違うということです。共通に体験したはずのことについて話していて、私にとっては間違えようもないことが相手の記憶では別なものになっていたり、相手が具体的に記憶していた出来事を私はそんなことがあったことすら全く覚えていないということはよくあります。

 先日、ある人と話していて、ひょんなことからどうやら共通の知り合いがいることがわかったのですが、二人とも名前が思い出せませんでした。男性、職業、眼鏡使用、髪型も一致し、「たぶんあの人だ」と双方思いながらも、親しい知り合いでなかったため、なかなか決め手がありませんでした。

 そのうち、彼女が「ヴァイオリンを弾く方」であったことを思い出しましたが、私の記憶にはヒットしません。彼女の娘さんは音楽をなさる方だったのです。さらに時間をかけるうち、私はその人について知っている唯一のことを思い出しました。
「ひょっとして、バラを育てていらっしゃる方では?」
「そうよー、バラよ~。」
ようやく出た決定打に、手を取り合って喜びました。

人は自分に興味のあることしか覚えていないのです。
名前の方は・・・いまだに思い出せません。