東北の田舎暮らしの醍醐味は、ふつう醍醐味とは言わないでしょうが、不便な点にあります。しっかり生きないと生活できないのです。冬の朝の気温は都会のマンションと10℃は違います。ストーブに火を入れ、お湯を沸かしているうち、「さあ、一日が始まるぞ。」と気持ちが高まります。
思わぬ大雪の日は朝食後にまず雪かきです。新雪なら踏み固めないようにしてそおっと土の見えるところから持ち上げて捨てると、陽が差せばすぐに雪は消えて道ができます。陽が出ないと残念ながら雪はしばらく残り凍ってしまいます。とにかくまず道路までの道をつけないとどこにも行けません。
天気が非常に変わりやすいので、あらゆることを時機を見てやらなければなりません。犬の散歩、洗濯物干し、買い物等ころあいを逃すとあっという間に吹雪いてできないという事態になることもしばしばです。実家から大きなスーパーまでは歩いていくには遠いので、もとは魚屋だがだいたい何でも扱っている比較的近くの万屋に買い物に行き、リュックに背負って雪道を帰ってくると体はポカポカになっています。あのお店のおかげで買い物難民になるのを免れているお宅も多いことでしょう。
大変そう、事実大変です。でも都会の生活だって大変でしょう。雪かきしてもまた雪は降ります。生活のほとんどはその繰り返しです。だから田舎暮らしをしていると、「奮闘努力の甲斐もなく」一日を終え、それでも「また明日頑張ろう」としている全ての人にエールを送りたくなってしまうのです。