2013年5月4日土曜日

「エッセイの醍醐味」


 女性のエッセイストは多いですが、私が好きなのはKさんです。大学卒業後、生命保険会社に就職し、その後中国留学をし物書きになった方です。エッセイというものはあまりに年齢が違ったり、生活レベルや行動様式が異なっていると共感できないことが多いのですが、感受性はかなり違うものの同世代で問題意識も近いので読みやすいのです。彼女は大学の同期で、むこうはこちらを知りませんが、それなりに目立っていたので私の方は彼女を知っています。少し前にいまや日本人の二人に一人はかかるという病気をなさいましたが、無事回復されて何よりでした。

 彼女の書くものはちょっと休みたい時に読むのに最適です。日常生活に軸足を置き、重要なことは何も書いていないので、疲れたとき肩の力を抜いて読めるのがいい。「重要なことは何も書いていない」というのはエッセイにおいては褒め言葉で、肩の凝るようなものを書かれても困る、そういう気分でエッセイを手にするのではないのです。時折見せるおちゃめで間抜けな側面はそのまま素であるわけはないでしょうが、こちらをホッとさせてくれます。

 大変だろうと想像するのは、どんな時でも定期的に書けなくてはならないこと、不案内な分野でも要請があれば書かなくてはならないこと、そして何よりきついだろうなと思うのは、それを顔と名前を出してやらねばならないことです。プロとはそういうものです。

 なにか情報を求めてではなく、ちょっと手持ち無沙汰な空き時間、特に何が書いてあるというわけではないけれど、なんとなく読みたくなる、つい読んでしまう・・・ これぞエッセイの真骨頂でしょう。