2013年12月20日金曜日

「ドイツの食事情」


 ドイツの料理は一般に考えられているよりずっとおいしいものです。提供される食事の量を考えてよくスープを食しましたが、かなり美味でした。ただ、衣食住でいうと、衣にも食にも関心が薄く、ドイツ人の関心はもっぱら住、それも建物というより住環境、生活環境に向けられているというのは確かでしょう。 そこへいくと日本人が食に寄せる関心とエネルギーには計りしれないものがあります。外国人がたまたま子供の住む日本を訪れて料理番組の多さに驚き、
「この国の人はそんなに食べるのが好きなのかい。」
と聞いたという話もあります。

  大学時代ドイツに短期留学した友人が、「ある時ホストファミリーがランチを作って持たせてくれたが、パンとゆで卵だけで悲しかった」と話していました。逆に彼女が一度だけ夕飯を作ることになり、天ぷらを揚げてあげたら、
「日本の主婦は本当に毎日こんなことをしているのか。」
と驚かれたと言います。そうなのです。ドイツでは一般に夕食に火を使った料理はしないようなのです。パンにチーズやハム(それはそれはたくさん種類はあるのですが)、よくてサラダというのが普通のようです。これでは日本人にはわびしくてたまらないでしょう。

 ヘルベルトは料理をしない人でしたから、ドイツでは毎晩外食、私はこの上なく楽ちんで、温かくおいしい食事を堪能していました。ですからドイツの家庭料理についてほとんど知しませんが、ドイツ人の食への無関心はお金があるなしに関わらないようです。お金持ちでも夕食は家で質素にとっているので、毎晩外食などどいうのは、ドイツではもう途方もないことなのです。

 今思うと、普通に夕飯を作ってもドイツ人の感覚からすると、とても手のかかったおもてなしと映ったのではないでしょうか。今でこそ和食なブームですが、味噌汁を「初めて食べたときから美味しいと思った。」と言った時は「へえー」と思いました。すき焼きなどは「昨夜のスープまだある?」と言って食べてくれるほど好きでした。朝はたいていパン食で、オムレツが好きだったのでトマト入りのをよく焼きましたが、何の変哲もないオムレツを「こんなおいしいオムレツは食べたことがない。」と大げさにほめてくれました。あれにはドイツの食文化がおおいに関わっていたわけです。また焼いてあげたいのですがそれはもうかなわないことです。