2013年10月28日月曜日

「紅春 37」

「あら~、美しい犬だこと。」
「きれいだね~、かわいい。」
散歩中、りくはいろいろな人からいろいろな声を掛けられます。大きな声で思ったことをそのまま発声するご婦人がいるかと思うと、ひそひそ話をしながら通るご夫婦もいます。

「あの犬、かっこいいね。」
「うん、かっこいい。」
思わず耳がダンボです。

 土手を大型犬が登ってくるので、りくがお座りして通り過ぎるのを待っていたら、
「まあー、立派。なんて立派な。」
と飼い主さん。

「何か見てるんですね。」
「ええ、川を見ています。」
りくは土手の決まった場所で向こう岸に向かってきちんと座り、じっと川をながめるのが好きです。放っておくといつまでも見ているので、「そろそろ行くよ。」と言って散歩の続きを促します。

「りくちゃんですね。」
「はい、りくです。」
りくの名は知っているのですが、何かしら声を掛けたいのです。
「りくちゃんでしょう、八重丸君のお友達の。」
交友関係まで知られている・・・。
「りくちゃん、りくちゃん。」
とひたすら名前を連呼する方もいます。

 りくの態度はいつも同じ、まったくどこ吹く風なのです。もうちょっと愛想よくしてちょうだい。