2013年9月28日土曜日
「企業人の資質」
一般人には不可解な事件が2つありました。JR北海道の相次ぐ列車事故とカネボウの白斑問題です。利用者が列車に求めるものは何より安全であり、化粧品は美しさという夢を売る商売です。一般の顧客からみたら、「他のことはともかく、そこは御宅の本丸でしょう。」という部分が大きく毀損されたのです。
内部の事情は知りませんが、JR北海道の方は、あれだけの広大で人がまばらな土地に鉄道を走らせて収益をあげるのは困難であろうと容易に想像できます。赤字会社に人員整理はつきもの、路線の保守・点検も慢性的な人手不足だったのでしょう。さらなる人口減少、過疎化が予想される中で収益をあげるという、誰がやっても至難の業である事業を背負うのは並大抵のことではありません。社長が「戦線(業務改善命令に対する対応のこと)を離脱することをお詫びします。」との言葉を残して自殺したのはお気の毒でやりきれませんが、他に方法がなかったのでしょうか。トップが消えてしまったのではどうすることもできません。
カネボウの方は、2年も前から白斑問題が報告されていたというのに放置されており、これを「事なかれ主義」と呼ぶのは言葉の使い方が違うでしょう。「病気だと思っていた。」と言うのが本当なら、企業のトップとしてあまりに鈍く不適格であり、本当は問題があるのではないかと思っていたのなら、良心のかけらもなかったと言わざるを得ません。専門機関に調査を頼むとか、同じ症状が出た社員に事情を聴くとかいくらでもやりようはあったはずです。役員報酬を一部返上という解決で済ます感覚にも唖然とさせられます。ここには、結果があまりにも致命的であるために問題をなかったことにしたい、起きてはならないことは起きるはずのないことにしたいという、いわば東電と同じ心性が見られます。
この二つの企業は正反対に見えるトップのありようですが、実は同じ人間性の限界を示しているのだろうと思います。前者は負いきれぬ責任の重さに自らの命を絶ったのであり、後者はここまで良心を麻痺させないと精神が責任の重さに耐えられなかったのでしょう。もうタフな企業人はいないのかもしれません。