2013年9月13日金曜日
「東京オリンピック招致」
オリンピック招致合戦の報道があまりに過熱して辟易したので、しばらく見ないでいたらある朝東京に決まったことを知りました。「へえー。」と思いましたが、別に悪い気はしませんでした。思うに今世界中でそこはかとない日本ブームが起きているのが勝因ではないでしょうか。世界の通常の観光地が人を引き寄せる要因が名所・旧跡であるとするなら、日本は全く別なもので人々を引きつけているのです。
「食文化」(しかも高級な料理だけでなく、ラーメン、たこ焼き、餃子といったB級グルメも含む)や様々な「かわいい」もの(キティちゃん、アニメのキャラクター、そしてゆるきゃら)、それに大震災で明らかになった「自然発生的な秩序」「思いやり」「おもてなし」の文化というものに、IOCの委員をはじめ世界中の人が惹かれ、「なんだかよくわからないけどちょっと行ってみたい国」に大手を振って行けるチャンスを作ったのだろうと思います。
ところが実際の計画というか、競技や選手村の予定地を見た時、「こんな臨海部で大丈夫かな。」とまず思いました。何もないとは言い切れないので何かあれば被害が大きいのではないかと思ったのです。次に招致決定までのプレゼンを見ているうち安倍首相の言葉にびっくり仰天しました。
「汚染水は福島第一原発の0.3平方キロメートルの港湾内に完全にブロックされている。」
「(福島第一原発の)状況はコントロールされている。」
こんな国民の誰一人信じていないことを全世界に向けて言ってしまうとは。小さな嘘はすぐ見破られるけれども大きな嘘は通ってしまうというのはこういうことでしょうか。これはアメリカと密約しながら「非核三原則」を声高に唱えてノーベル賞までもらった政治家と同じレベルの大嘘です。あれは祖父の岸信介ではなく、大叔父の佐藤栄作でしたね。
またそれより前の記者会見だったか、招致委員会の竹田理事長が汚染水問題を問い詰められて、「東京は福島から250キロも離れているから安全」と発言しているのを聞き、
「あー、それを言うか。福島は危険だけど東京は安全だと・・・。」
と気持ちが沈み悲しくなりました。もちろん、一義的には福島を思って気が沈んだのですが、もっと大きくはこの国を思って気が沈んだのです。経験的に言うと、自らの弱い部分を切り捨てた組織は生き残れないからです。その時はよくても、長い間に取り返しのつかない大きなダメージとなって返ってくるのです。
安倍首相がついたような嘘は諸外国であればよくあることです。19世紀にイギリスの外相から「文明世界最悪の嘘つき」呼ばわりされたメッテルニヒも、「言葉は嘘をつくためにある」と言って恬として恥じない古狸タレイランにはまんまと乗せられました。残念ながら外交は、ある国にその気がなくても相手国にとってはだまし以外の何ものでもないという場合が往々にしてあり、そういう面を抜きには語れません。日本の外交下手の理由の一つは、生真面目で正攻法過ぎる点にあると思います。(もちろん、他に200くらい理由があるでしょうが。) 血筋ということでもないでしょうが、日本でも堂々と嘘がつける世界基準の総理が出てくるようになったのです。ですが、私はやはり日本は目先の国益にかなわなくても本当のことを言ってくれる世にもまれな国であってほしいと思うのです。