2013年8月26日月曜日
「DBとの戦い」
初めてドイツを訪れた時、移動方法は全面的に鉄道でした。駅や列車が好きなのと、時刻表さえあれば間違いなく移動できるからですが、切符を並んで買うのが面倒で(相当列をなしていて時間がかかることも多いのです。)、ユーレイルパスを使っていました。英国旅行ではブリットレイルパスが便利でしたが、ジャーマンレイルパスは使い方に制約があり不便そうだったのでユーレイルパスにしたのです。ヨーロッパ中移動できるパスなので割高でしたが、時間がなくても滑り込めるし、いつでも一等に乗れるので便利でした。
パスと言っても飛行機の搭乗券くらいの大きさでしたが、検札が来てもそのパスを見せるだけで何の問題もなく旅行していました。ところが、或る時やって来た検札の人が、
「これはダメだ。」
と言いました。理由を聞くと、その切符は本物ではない、控えだと言うのです。最初何のことかわからず、これは間違いなくユーレイルパスでこれまで問題なく列車に乗れていたことを話しましたが、やはり「これではダメ、もう一枚の方。」と言われ、あやうくどこかに連れて行かれそうになりました。その時思い出したのが、「もう一枚の紙」です。そう言えばユーレイルパスを買った時、「控え」として大きさは同じくらいでしたがペラペラの薄い紙をもらったことを思い出しました。高額なので紛失した時のためのものなのだろう、必要になることはまずないだろうとスーツケースにしまってありました。
「ありますっ。」
と言って、スーツケースをガバッと開け探したところ見つかりました。いろんなものがごちゃごちゃ詰まったスーツケースの中身を見られるのは恥ずかしかったですが、そんなことを気にしている場合ではありません。犯罪者扱いされようとしているのです。その紙を車掌に向かって燦然とかざすと、
「あっ、これでいいんだ。」
と言って行ってしまいました。「えっ、謝罪の一言もないの?」とのけぞり拍子抜けし、それから怒りがこみ上げてきました。しかしよくよく考えてみれば、これは本体と控えを取り違えた私の勘違いが生んだ事態なのです。今まで切符と思っていたものが実は控えで、それでもそれまでの検札が大目に見てくれていたのです。独り相撲と言えばそうなのですが、DBとの戦いにどっと疲れました。