福島県立美術館で開催されていた「よみがえるオオカミ展」を見に行きました。これは例の放射能汚染で被害を受けた飯館村の山津見神社の天井絵で、火事による消失前に写し取られていたものを復元したものです。特に関心があったわけではないのですが、福島のNHKで紹介してる番組を見たらなんだか行きたくなってしまったのでした。入場料はなんと270円。
結論から言うと行ってよかった。とてもかわいいオオカミの絵が242枚も展示してありました。茶色以外に、白、黒のオオカミ、また白と茶のぶちのオオカミもいました。まるで犬です。かなりの割合で、水色の目に赤い鼻のオオカミがいます。これも日本オオカミなのか、それともこの着色は眼光や鼻が光っていることを表現したものにすぎないのか・・・。1枚1枚退屈することなく鑑賞しました。一番強く思ったのは、242枚も描くにはよほど長い時間オオカミと一緒に過ごさねばならなかっただろうということです。オオカミが絵のモデルとしてじっとしているわけはないだろうということを考えると、こんなにたくさんの姿勢、体勢のオオカミが描かれているのは生活を共にしていたにちがいないと思うのです。オオカミの表情に凶暴さはみじんも感じられず、二匹でじゃれ合う様子や子供を連れた一家の様子などは犬と変わりません。そしてどれを見ても、「うん、りくもこんなポーズすることある。」と感心してしまいました。今まで私はりくが猫背であることを何か骨が変形する病気ではないかと気にしていたのですが、この展覧会を見てそれがオオカミの特徴なのだと知りました。背骨がぽこんと出た絵柄が何枚もあり、なんだか安心しました。いずれにしても、絵師の狼に対する愛情を深く感じた展覧会でした。
考えてみれば今年の初めに会ったフェルメール展はパスしたので、福島県立美術館に行くのは若冲展以来です。今年、東京都美術館で開かれた若冲展は6時間待ちの大盛況という報道がありましたから、福島で見ておいて本当によかったと思いました。オオカミについては一般的な関心は高くないようですが、コアなファンが結構います。私が愛読しているドイツに住む柴犬二頭飼いの日本女性もプロフィールにはっきり「オオカミ好き」と名乗っており、たまに「オオカミの野生公園に行ってきました。」といった記事が載ります。気持ちはわかる、柴犬のご先祖はまちがいなくオオカミだろうと、むやみに愛着がわくのです。
「今日はりくのご先祖の絵を見てきたよ。」
と、隣で正体もなく寝ているちっちゃい、おとなしい、弱っちいオオカミの末裔に話しかけましたが、おもむろに
「なあに、お腹なでて。」
と仰向けになりました。さすがに仰向けの絵はなかったような・・・。これが犬とオオカミのちがいなのでしょう。