何日かぶりで晴れた風のない日、今日を逃したら当分行けないだろうと思い、自転車で買い物に出かけました。普段は運動かたがた歩いて行くことが多いのですが、今日の目的地はやや遠いのと買い物リストには北海道産小麦3kgがあるため、ちょっと気合いがいるのです。行く途中でも感じたのですが、この日は涼しげな青い半袖の制服を着た警官の姿が結構目につきました。
用事を済ませての帰り道、ここにもあそこにもという感じでお巡りさんの傍らを通り過ぎたのですが、もう少しで自宅という時、「すみませ~ん。」と追いかけてくるお巡りさんがいるではありませんか。怪訝な気持ちで自転車を止めて応じました。
「自転車の照合をお願いしたいのですが。」
「何かあったのですか。」
「自転車の盗難が多いので調べているんです。こちらは長くお使いですね。」
ええっ、私も調査対象なのか。こんなおばさんでも怪しまれるのか。確かに人の外見によって声掛けに差をつけてはいけないのだろう。それに私は紫外線を避けるよう言われているので、夏でも長袖を着、マスクをし、帽子を目深にかぶっている。傍から見ればかなり怪しげ・・・。確かに自転車は相当錆びている。まだ動くから捨てられないし、このくらいの方が盗まれる可能性が低いと思っていたが、実は逆なのか。でもこんなピンクのハンドルカバーがついてる自転車を盗むのは勇気がいるのでは・・・。いろいろな思いが頭を駆け巡る。
「もう十年以上使ってます。どうぞ。」
「お名前お願いします。」
お巡りさんが無線で私の防犯登録番号を告げてやりとりし、直後に
「ありがとうございました。照合できました。」
「大変ですね。」
お巡りさんは一礼して戻っていき、私はそのまま何事もなく帰宅しました。家に帰ってつらつら考えましたが、自転車の盗難といった軽犯罪にこれほど真面目に取り組んでいるとはえらい。都民の税金を貪っているとしか言いようのない都知事の卑しさと比べたら、暑い中淡々と職務をこなす都の職員の姿勢は高貴と言えよう。めったに言葉を交わす機会はないのだから、「お仕事がんばってください。応援してます。」と言えばよかったなあというのは、いつものように後知恵でした。