2013年7月19日金曜日
「働く人を応援します」
高速バスに乗るためにバス停にいた時のことです。私の前に一人女性がおり、後ろにも数名乗客が並んでいました。バスが来て、前の女性が身分証らしきものを見せながら、運転手さんに言いました。
「切符はないんですが・・・」
インターネットで切符を購入すると、自分で切符をプリントアウトしなければならないので、私も以前うっかり忘れそうになったことがあり、その事情はわかると思いました。驚いたのは次の言葉でした。
「席は9Aで・・・」
私はとっさに自分の切符を見返し言いました。
「9Aは私です。」
運転手さんの座席表にも私の名が書かれています。なにか手違いがあったようで、違う日か違う時間のバスを予約してしまった可能性が高いでしょう。
他の人が全部乗ったあとも、運転手さんと彼女はバスの外でやり取りしており、すでに15分以上遅れています。それが20分になったところで、別の乗客が「スケジュールを組んでいるので、予定通りに進めてほしい。」と話しに行きました。件の女性は予約の確認ができなかったのでしょう、結局、その場で料金を払って乗るしかありませんでした。
運転手さんは、出発が遅れたことを乗客全員に何度も詫び、とくに出発を促した乗客のところへ来て、ひざまずかんばかりに平謝りして出発となりました。それぞれの立場でもっともな主張でもあり、仕事するのは大変だなあと思いました。道路が空いていたこともあり、バスは快適に飛ばしていきました。
私はサービスエリアでの休憩のときに、
「お仕事大変ですが、頑張ってください。安全に着きさえしたら、もうすべてオッケーですから。」
と声を掛けました。遅れは少しずつ解消されていきました。終点の福島駅東口で降りる時、運転手さんから「先ほどは心強かったです。」と言われました。
働いているといろいろな問題が起きます。大抵の場合、声なき民衆が何を考えているかわからないので、声をあげた人の主張が優先されますが、民衆の大方が同じ意見とは限りません。この場合だと、皆「遅れて困るなあ。」という気持ちはあるものの、「あのお客さん、はやく納得してくれるといいなあ。運転手さん、気の毒だな。」と思っている人も多かったでしょう。でもそれは思っているだけでは伝わらず、運転手さんからすれば、全員が「早く出発しろ。」と言っているように感じられるものです。しかし、一人でも自分の立場をわかってくれている人がいれば孤立感を味わうことはありません。ですからそれはできれば伝えた方がいいと思うのです。それだけで、仕事のモチベーションが全然違うということを私は誰よりも知っているつもりです。