2013年6月10日月曜日
「フーズム Husum 」
初めてドイツを訪れた時、思い立ってハンブルクからさらに北に列車で片道2時間かかるフーズムまで、日帰り旅行をしました。8月でしたが、北海に臨む北の町は、「灰色」とは言わぬまでも、真夏でもどこか寂しい雰囲気が漂っているのでした。港にはなぜか、「5月が来た Der Mai ist gekommen」のメロディが流れていました。往復の時間を考えると、滞在時間はわずかです。
フーズムを訪れたのはそこがシュトルム Theodor Storm の生地だからです(かつてはデンマーク領)。法律家として職に就きながら、かなわなかった未来への諦念や過去の幸福な記憶の中に静かに生きる人々を描いたこの作家が、どのようなところで生まれ育ったのかを見たかったのです。
おそらく『みずうみ(Immensee)』のモデルとなった原風景はどこかにあったのでしょうが、それにたどりつくことはできませんでした。彼が住んだ家はシュトルム記念館になっており、書斎の様子などを見ることができました。近くには彼の名をとった、その名もシュトルム・カフェ STORM・CAFE と彼の生家がありました。
「あなたのおうちにもよろしく言って。世界中であんな懐かしい家は二度と見つからないわ。」
『人形使いのポーレ (Pole Poppenspäler)』の中で、旅芸人の子リーザイがひとときを過ごした菩提樹とその下のベンチは・・・ ありました。もう二十年以上も前のことです。