2013年6月3日月曜日

「起こらなかった事件」


 ボストンマラソンのテロ事件は世界に衝撃を与え、その後の催しの警備が強化されましたが、ロンドンはともかく、かすみがうらマラソンに例年以上の警備が必要だと感じた人はどの程度いたのでしょう。日本にももちろんテロはありますが、イスラム思想がらみということでは事件など起こりそうな気がしないというのが本音でしょう。理由はいろいろ考えられます。日本では人種的偏見を露骨には表さない、宗教的に寛容である、他人とくに外国人に親切なところがある、隙が多すぎてテロをする気にならない、または手柄にならない等々、テロを行うのは得策ではないと思わせるものがあるのでしょう。

 ボストンの件は事件の詳細や背景の解明を待たねばなりませんが、イスラム思想が絡んではいるものの本質的に移民問題であることは明らかです。外国からの移民が問題化するのは、どこの国でもその数が或る水準を超えた時です。それまでは、「わりと好きな国だから。」という理由でテロは起きないし、その逆の排斥運動も起こらないでしょう。

 この「わりと好かれている」ということは実はとても大きなことです。それは、その逆の感情すなわち或る国に対する嫌悪感や敵対心を形成することとは違って、国家がコントロールしようとしてもなかなかできないことであり、民間レベルの交流や個人的な好み、民衆文化の高さなど国民個々人の感覚を中心に形成されるものです。BBCが毎年行っている「世界に良い影響与えている国」ランキングで2012年に日本は1位に選ばれています。テロや原発事故が起きた時に失われる取り返しのつかない損失は大きく報道されますが、起きなかった事件によって失わずに済んだ利益に関しては顧みられることがありません。でもそれはとても大きな財産なのです。