私はできれば医者とはかかわらずに過ごしたい人間なのですが、やむなく通院を続けています。それも長期間になり、残念ながら今後も続けなければならないようです。これまで医師が二人変わって、今は三人目。タイプが全く違う三人なので、こちらも戸惑っています。
一人目は対面の診察を大切にし、こちらの質問にできるだけ短く答えてくれる医師でした。検査結果を毎回プリントアウトしてくれたので、帰宅してから病状を考える手立てとなりました。「高熱が出たら必ず救急車ですぐ来るように」とも言ってくれ、実際はどのような対応になるにせよ、その言葉だけで安心感がありました。
二人目の医師はてきぱきとした研究者タイプで、別な観点からの検査と分析でこちらも理解を深められましたが、異動のため数回で診察が終わったのは残念でした。
三人目の医師は、こちらから聞かないと詳しい説明がなく、ついいろいろと聞いてしまうので、先生のペースを乱してしまうようです。検査結果のプリントアウトもこちらから言わないと渡してもらえず、こちらも忘れてしまうのでデータが飛び飛びにしか残りません。先生に聞きたい内容を心の中でまとめて行くのですが、私がうまく説明できずに話が嚙み合わない。お忙しいのはわかるのですが、もう少し共感的に話を聴いてもらえたらなと思うこともたびたびです。
通院歴の長い患者として望む医師の理想像は、なんといってもまずよく勉強して、海外の医学論文にもキャッチアップし、臨床の場で生かす方法をいつも頭の片隅で考えているような医師です。
例えば尿酸値の高い患者に対し、「レバーはよく食べますか?」「ビールは飲みますか?」と聞くのは当然ですが、その二つは患者でも知っているプリン体の多い食べ物です。これらはどちらかというとバリバリの現役会社員や体を使った労働を担うことの多い人が好む食べ物ではないでしょうか。どちらも普段食べない患者は何がいけないのか悩みます。
先日、私は「果糖が尿酸値を上げること」、「カフェインもプリン体である」と知り、深く納得しました。私の故郷はフルーツ大国といえる県であり、果物は体の半分がそれでできているのではないかと思うほどの好物です。また、コーヒーは普段最もよく飲む飲料の一つで、これも私の生活に欠かせないものですが、カフェインとプリン体の化学構造はそっくりだというのです。
私はこれらの情報を自分で調べたり、たまたま別のことを調べていて知ったりしたのですが、こういったことを医師から伝えられていたら疑問は氷解していたはずです。ちなみに、尿酸値が高くても良い点はあることを知ることができたのはうれしいことでした。カフェインも尿酸も動物の動きを活発にするとのことで、カフェインがそうなのは知っていましたが尿酸もそうだったのかと驚いただけでなく、或る大学での大規模な調査により、「尿酸値の高い人は記憶力や認知機能が高く、将来認知症になる可能性が低い」ことがデータ解析によって証明されていることも知りました。こうなると尿酸値の見方も変わってきます。
私は検査慣れしていて、正常値の範囲を気にしていましたが、「これも一概には言えないのではないか。正常値を多少外れていても異常とは言えないのではないか。私は正常化バイアスに惑わされてきたのではないか」という気がしてきました。何より自分を作ってきた、そして毎日おいしく食べている(飲んでいる)ものがそんなに悪いもののはずがありません。
というわけで、私は「どんな質問にも最新の研究成果を引用して答えてくれ、長時間の質問も許してくれるAI医師の診察を受けてみたいと思うのです。こういった総合診療医的な能力はAI医師の得意とするところなのではないかと思うのですが、いかがでしょう。こんな願いは我が儘でしょうか。