2021年4月12日月曜日

「いわゆる金銭問題の解決法」

  肉親のいわゆる金銭問題でもう何年も結婚に進めないカップルがいます。これを暗澹たる気分で見守り、新たに出された文書に頭を抱えた人も多いことでしょう。気の毒なのはなまじ法律家を目指す人を結婚相手に選んだ女性です。これまでの経緯を明らかにすることで少しでも理解を得ようとされているのですが、これは残念ながら裏目に出たようです。もともとこの問題にさほど関心がなかった私でも、聞くともなしに情報をフォローしているうち、「発表内容はもう少し何とかならなかったのか」とがっくりしました。

 お金にまつわるこんな内情を知りたくなかったというのが、私には正直なところです。法律家の目から見ると、発表された28ページにもわたる内容には借金と解決金を取り違えているなど、いろいろと不備もあるようですが、そんなことより湧き上がるのは、「解決金という名目でよいから、とにかくお金は返した方がよい」という思いです。キツイ言い方をすると、贈与であるにせよその発生事由がなくなっているのに「よく受け取ったままでいられるな」という気持ちで、私などには思いもよらないことです。一番ぎょっとしたのは、「将来の私の家族までもが借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続けるということを意味します」というくだりと、「録音をはじめとする記録はあるものの」の部分です。この過剰な恐怖感こそが、これを書いた人は「いただいたお金は借金だった」ということを誰よりも意識していた刻印であると感ぜずにはおれません。

 もしかすると私は勘違いしているのかもしれませんが、それは一般人が普通に聞いて思い違いするほどこれまで複雑な対応がなされてきたということです。お相手の方が気の毒で仕方ありません。いま求められているのは法律家としての手腕ではありません。現実的によい方向へ話を進めることを第一の達成目標とするなら、もはや誰もが100%納得できる方法はないと覚悟を決め、「双方が折り合いをつけるためのなにがしかの解決金を支払い、文書に留める」という方法しかないのではないかと思います。そしてこの交渉の間にはちゃんとした法律家に入っていただき、内容については公表しない(双方の署名文書があり、落着したことだけ発表してもらう)のが鉄則でしょう。世間もなんとなくもやもやと納得できない気がしているのですから、これで三方一両損です。ただ時節柄、私自身が一番感じたことは、どんなことでも免疫がないのは恐いなということです。