2016年8月2日火曜日

「お湯を沸かす」

 昔の人の生活は朝起きてお湯を沸かすところから一日が始まったのだと思います。父もそうでしたので、私が帰省して父より早く起きるときは同じようにしていました。いつの頃からかこの習慣は日本から徐々になくなっていったのでしょう。家族の人数が減り、個々に分かれて住むようになってからポットにお湯を保温しておくのが不経済になってきたのです。必要なときに必要な分だけお湯を沸かすことが普通になってきました。また、私もそうですが、お茶ではなくコーヒーを日常的に飲む人には、手で丁寧に淹れる場合は別にして、エスプレッソは無論のことドリップ式にしてもサイフォン式にしても、それ専用の機器があるためお湯を沸かす必要がないのです。些細なことですが、日常の生活様式はいつのまにかかなり変わったのです。

 先日、これまで使っていたサイフォンの寿命が来て、新しいのをいろいろ調べているうち、フレンチプレス式なるコーヒーの淹れ方があることがわかりました。てっきり筒状のティーポットだと思っていたのですが、耐熱ガラスに挽いたコーヒー粉を入れ熱湯を注いでしばらく置き、フィルターのついた金属棒を押し下げて豆殻を濾すようです。コーヒーが国民飲料のようなドイツでも一度も見たことのない代物でしたが、新しいコーヒーの淹れ方となれば試してみないわけにはいきません。ごくシンプルな淹れ方ながら日本でもドイツでも浸透していないのには何かわけがあるのかもしれないと思いつつ、器具を購入してやってみることにしました。しかしこの方法では飲むたびにお湯を沸かす必要がでてきます。

 お湯を沸かすと言えば自宅ではやかんで沸かすしかありませんが、今はこの暑さ、ガスを使うのはできるだけ控えたい。「電気ケトルが一つあってもいいかもな。」と思い、ついでに買うことにしました。電気湯沸しと言えば、「あっという間にすぐに沸く」のT社が有名ですが、内側がステンレスのものを探してP社に決定。0,8リットルは十分な容量、丸っこいやかん型ではなく寸胴の魔法瓶型、直径とほぼ同じ広口の取り外せる上蓋、本体を載せるコード付き円盤、沸騰時自動電源オフ、空焚き防止機能付きと、大変よくできた製品です。さっそくカップ1杯分のお湯を沸かしてみたら、高速70秒でとても便利。早すぎてコーヒーの準備が追いつかないくらいでした。食材の下ごしらえとか、即席の味噌汁、インスタント食品にも重宝しそうです。

 肝心のフレンチプレスコーヒーについてはまだ結論が出せません。味はなかなかよいのですが、フィルターではコーヒー粉を完全に濾せず、ドリップ式のつもりで飲むとかなり違和感があります。ハンガリーで何度か試したトルココーヒー(粉というより細かい豆殻が沈むのを待って上澄みを飲む)ほどではないにせよ、やはりあの粉の沈殿はなんとかしなければなりません。いずれにしても新しいコーヒーの淹れ方があれば懲りずに挑戦するつもりです。