朝起きた時、私が目にするりくの姿はだいたい三つのパターンがあります。まずよくあるのが茶の間のこたつの中の奥深く、ほとんど洞窟で眠るかのように丸くなって寝ている姿。安心してよく眠れたのであろうとうれしくなります。この状態の時は私が洗面している間にむっくり起きて、廊下や台所をうろうろしながら散歩に行く準備をします。
家では自然に目が覚めるので目覚ましをかけることはほとんどありませんが、たとえ寝坊してもりくが起こしに来るからという安心感もあります。りくの体内時計の起床時間が過ぎると、タッタッタと足音をさせてやってきて、「ちょっと遅いんじゃないですか。」というふうに手を出してきたり布団に体をすり寄せてきたりします。この状態の時は、私が洗面するのも待ちきれない様子で、速足で行ったり来たりして私をせかします。
起きてこたつの洞穴にりくの姿が見えない時は、たいてい茶の間から台所へ通じる入口でびしっとお座りしています。朝のこの姿は写真に撮れないのですが、本当にハッとするくらい良い姿勢で、「お待ちしておりました。」という風情です。なんとなく古武士が正座しているような趣があり、こちらも背筋を伸ばして急いで洗面を済ませなければならない気になります。起きて一番気分がいいのは、りくがこの姿勢の時です。「では参ろうか。」と声掛けして二人でさわやかな朝の散歩に出かけます。