人が孤立するとどれほど危険な存在となるかは、JRの架線切断事件や熊谷での強盗殺人事件を待つまでもありません。自分以外に心の思いを打ち明けて話せる人がいないとなれば、自分が神にならざるを得ないのです。自分の思いをぶつける相手がおらず、不満をため込み募らせていくことがどれほど深い闇に人間を追いやることか。
詩編を読む時、まず圧倒されるのが神とのあまりの近さです。こんなに何でも話してよいのかと、いぶかしくもありうらやましくもあるほどです。えげつないほどに敵の殲滅を願う気持ちなども包み隠さず話しています。詩編を読んでいると、わだかまりを心に持つよりは何でも話した方がよほどよいのだとわかってきます。なぜなら、彼らにはそこに話すべき唯一の神がいるからです。彼らはどれほど一人であっても孤独ではないのです。
詩編46編(新共同訳)
46:1 【指揮者に合わせて。コラの子の詩。アラモト調。歌。】
46:2 神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。
46:3 わたしたちは決して恐れない/地が姿を変え/山々が揺らいで海の中に移るとも
46:4 海の水が騒ぎ、沸き返り/その高ぶるさまに山々が震えるとも。〔セラ
46:5 大河とその流れは、神の都に喜びを与える/いと高き神のいます聖所に。
46:6 神はその中にいまし、都は揺らぐことがない。夜明けとともに、神は助けをお与えになる。
46:7 すべての民は騒ぎ、国々は揺らぐ。神が御声を出されると、地は溶け去る。
46:8 万軍の主はわたしたちと共にいます。ヤコブの神はわたしたちの砦の塔。〔セラ
46:9 主の成し遂げられることを仰ぎ見よう。主はこの地を圧倒される。
46:10 地の果てまで、戦いを断ち/弓を砕き槍を折り、盾を焼き払われる。
46:11 「力を捨てよ、知れ/わたしは神。国々にあがめられ、この地であがめられる。」
46:12 万軍の主はわたしたちと共にいます。ヤコブの神はわたしたちの砦の塔。〔セラ
11節の「力を捨てよ、知れ/わたしは神。」は、文語訳では「汝ら静まりて我の神たるを知れ」でした。これもまたすばらしい訳です。口語訳も捨てがたい。1章1節は、
「悪しき者のはかりごとに歩まず、
罪びとの道に立たず、
あざける者の座にすわらぬ人はさいわいである。」
もう初っ端からすごい。安保法案を強行採決した国会の大混乱を見ても、私の心は騒ぐことがありませんでした。「主の成し遂げられることを仰ぎ見よう。主はこの地を圧倒される。」