東京に30年も住んでいながら、私は新宿の某名高いフルーツ店の超有名なフルーツバイキングに行ったことがありませんでした。こういうものは大都会でしか味わえないので試してみるのも一興と思い、先日友人と行ってきました。予約していけばすぐ入れるのですが、ネットで見たところすでに1カ月先までいっぱいだったので、当日席を求めて、出たとこ勝負です。
開店時間の30分前に到着しましたが、すでに同じく当日席に並ぶファミリー層や女性客で熱気にあふれていました。ちなみにここは男性だけでは入れないという逆差別的条件がありますが、食べる量と料金の兼ね合いを考えると、まあ妥当なルールでしょう。待合場所の椅子に座りきれないほどの光景を眺めながら、これが毎日繰り広げられる東京という都市のエネルギーをあらためて感じたのでした。
食べ放題は90分1本勝負なので、初回に入れなければ90分待つことになったところでしたが、運よく初回に滑り込めました。欲望の都を象徴する食の祭典、食台には文字通り食べきれないほどのフルーツや料理、デザート類が並んでいました。4年前に来たことがあるという友人の話では、その時より種類や量の水準(当然料金も)がかなり上がっているとのことでした。第一ラウンドこそ人でごった返していましたが、人間そうそう食べられるものではありません。制限時間の半分でもう満腹状態となり、あとは取ったものを残さぬよう、また別腹で入るものを考えながら時を過ごしました。
食べ物のおいしさと豊かさにどこかで罪悪感を感じるほどでしたが、それに関連するちょっとした事件がその後に起きました。隣のテーブルの二人連れの一人が小さないちごのショートケーキを6個お皿にもってきて(それだけでも驚きでしたが)、上の苺だけ取ってあとの皿を下膳場所に置いたのです。恐るべき暴挙、食べ物に対する冒涜を目撃し、目が点になってしまいました。びっくりした我々の表情を見たのか、その人は「食べ放題なんでしょ。」と誰に言うともなく言いました。何より一番驚きあきれまた気が沈んだのは、あとで友人がいみじくも言っていたように、「あれをしたのがおそらく60代後半という年齢の人だというのが痛いよね。」という事実でした。小学校高学年かと思われるお孫さんと一緒に来ていて、孫のために苺を取り分けていたようでした。人生の後半戦、若い世代に伝えることがあるであろう年代の方がこれでは・・・と、やりきれない気持ちになったのでした。