子供のころ使っていた机の中から当時の通帳を見つけ思い出したことがあります。高校時代、日直の仕事の中に、クラスのパンの注文を取って始業前に購買部に頼みに行くという務めがありました。こうしておくとお昼にクラスごとに注文していたパンが届くのです。私がこの仕事を嫌だったのは朝からお金を扱わなければならなかったからです。始業前にはきれいに手を洗ったことは言うまでもありません。
子供のころ、といっても結構大きくなってからですが、何かの折に「そういうものは自分でお金を稼いで買いなさい。」とか「そういうことは自分で稼いだお金でやってください。」と言われることがありました。高校生くらいになればアルバイトすることを悪いとは思いませんが、当時田舎ではそんなものはありませんでしたし、アルバイトをしている人は周囲に一人もいませんでした。だからこそ親も平気でそう言えたのだと思います。
お金は貴いものですが同時に汚れたものでもあるという感覚が昔はあったように思います。私が子供のころは、子供はお金から遠ざけられており、子供がお金の話をすることを大人は極端に嫌っていたように思います。それは品のないこと、はしたないことだったのです。今そのような感覚を子供はもっていないのではないでしょうか。お金に関してあまり浮世離れしているのも困りものですが、疑似的にであれ子供に株式運用のまねごとをさせるなどはやめておいたほうがよいように感じます。うまく言えませんが、忌むべきものとしてのお金の一側面を子供の時に体得できないと金銭感覚が大きく損なわれるような気がするからです。昔と一番違うのはお金の持つこの半面の重苦しさが消えてしまったことです。今では大人も、ビジネスに関わる人だけでなく、政治家・官僚から一般庶民にいたるまでお金の話しかしません。なんとつまらないことでしょうか。