帰省して冷蔵庫を開けたら、昆虫ゼリーなる不気味な袋が入っていました。これから人口爆発時代の食料危機を救うのは昆虫と言われており、一瞬ぞっとしたのですが、「これ、なに?」と兄にきくとカブトムシのえさとのこと、胸をなでおろしました。虫が苦手という人は多いと思いますが、私もその一人です。子どもの頃は裏庭の杉の木の根元から地蜘蛛を捕まえたりできたのですが、もうまるで駄目です。写真に撮るくらいはできそうですが、傍で羽ばたかれたりすると「ひい~っ」と絶叫してしまいます。たぶん、都会の台所に時折出没するあの黒光りする忌まわしい虫を思い出すのでしょう。
さてカブトムシはというと、角のある雄で、土手の橋のたもとを照らす街灯の下に落ちているのを猫から守るために拾い、虫用の透明の箱に入れて裏の小屋に置いてあるとのこと。兄は一匹では可哀そうと思い、雌を買って来たところ何故か入れておいた雄がいない・・・という話は帰省した日に聞いていました。その後、休日の午後、息せき切って兄が帰って来たので何かと思えば、水場のある自然公園まで車で行き、五十メートル先の林の樹にとまっている点を見つけ、「執念で採ってきた」と、カブトムシ2匹、クワガタ1匹を見せてくれました。私はというと、「テカテカと光る黒い冑の殻はやはり気味悪い」という気持ちと、「子どもの頃はカブトムシとクワガタは平気だった、どっちかというと好きだった」という気持ちで葛藤がありましたが、なんとか触れました。兄は「昔採れた所にはもういなくなった」と言っていたので、気候や環境の変化で虫の植生が変わっているのかも知れません。カブトムシは大き目のガムシロップのような容器に入った昆虫ゼリーを1日1個食べるそうで、いま冷蔵庫の一角をこの袋が占拠しています。
もう一つ、小屋から兄が持ってきたのはキイロアシナガバチとコガタスズメバチの巣です。思わず「げえ~っ」という感じでしたが、前回の帰省時に自転車を出そうとしてハチの襲撃にあったことを伝えておいたので、退治してくれたのでしょう。私はたまたまカッパを来ていたので無事で、以後は蚊取り線香を炊いて様子を見ていたもののどうなったかと案じていたのです。ハチは両方とも天井に巣を作っており、小さな穴から殺虫剤を噴霧したらすーっとハチが落ちてきたそうです。標本のように紙にテープでとめられた2種のハチの死骸も見せられ、こちらは本当に「ひい~っ、無理!」というほかありませんでした。昆虫愛好家というのはそれ以外の人から見ると理解しがたいものがありますが、こんな近くに虫屋さんがいるとは思いませんでした。