2021年8月19日木曜日

「チャリンコ騒動」

 朝、いつも運動する公園に行こうとしてふと見たら、キーホルダーに自転車の鍵がない! 仰天して鍵探しを開始し、自転車置き場から玄関までを往復しましたが、見つかりません。朝の予定はキャンセルし、がっくり肩を落として家に戻りました。普通、スペアキーがあるではないかと思われそうですが、驚くなかれ、私の自転車は二十年来の代物なのです。全体に錆が出て、いかにも古くみすぼらしい。高さが調節できるサドルも一度ポロっと取れましたが、はめ直して金属用の強力接着剤で固定してあります。そう言えば、以前、自転車盗難防止キャンペーン中の警察官に声をかけられたのはあまりにボロい自転車だったせいなのかと、今頃になって合点がいきました。ネットで「自転車の鍵をなくしたら」を検索してみると自分にはできそうもない奥の手も紹介されていましたが、その他には「交番で鍵を開けてもらう」、「自転車屋で鍵を交換してもらう」という的外れの答えしか見つかりません。そこまで運ぶのが第一関門なのですから。結局、スペアキー探しに逆戻りです。

 これまで自転車を買い替えなかったことには理由があります。東京に出てくる時、田舎から持ってきた新品の変速自転車がほどなく盗難にあったのです。とても気に入っていた自転車だけに、あの時の失望と悲しみは何十年たっても忘れません。こういうのを心的外傷と言うのでしょう。私が盗人に対して非情なのはそのせいです。今思い出しても、せっかく買って持たせてくれた両親に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。それ以来、新品の自転車には乗れなくなりました。「いや、それより今はスペアキーっ・・・」と、何十年も前の出来事を思い出してさえずーんと気が沈みかける自分を叱咤して、心当たりを探すことにしました。あれからスペアはどこへ行ったやら~。

 それから15分、「もしやこれでは?」と思われる鍵が2つ見つかりました。キーの番号が違うのでそれぞれ別の自転車の鍵らしいと分かりました。勇んでそのうちの1つを自転車ロックの鍵穴に入れると、回すまでもなく途中からポキント折れ、先端が鍵穴に残ってしまいました。「ひえー、もうだめかも」と思いつつ、部屋に取って返し、とげぬきを持参。中で変に曲がってはいなかったようで、何度か試すうち先端を取り出すことができました。ついで恐いもの知らずのようにもう一つの鍵を鍵穴に入れ、鍵に負担がかからぬようロックのつまみを指で押しながら回しました。「カチン!」と音がして開いた時には信じられないような気持ちでした。

 実を言うと、これまで何度か自転車を買い換えようかと思わなかった訳ではありません。しかし、古い自転車を捨てられないもう一つの理由は、昔の製品は万事がちゃちな今の物とは違い、本体が非常に頑丈にできていることです。満身創痍であってもまだ使える物は捨てられない。寿命を全うさせてあげたいという思いから、これまでもタイヤの交換等は適宜してきました。今はまず鍵を交換すること、それからついでにライトをLEDに換えてもらうこと(ライトは自分が見るためではなく、相手から見られるためにある)が必要と決めて、自転車屋さんへ。数時間前のことを考えれば、文字通りここまで来られたこと自体が夢のよう。自転車屋さんはものの10分で二つの作業を終了しました。疲れたけど、何はともあれ感謝! 時々こういう活が入るのも悪くないかも。