2021年6月2日水曜日

「紅春 180」


 犬の中にはいろいろな物を食べる子がいて、みかんやリンゴはもちろん、キャベツや加熱したジャガイモを食べることもあるようです。或る程度雑食なのかとかつては思っていたのですが、りくの場合は全く事情が違います。野菜・果物は食べないし、ビスケットなどのお菓子類もにおいを嗅ぐだけで「ふっ」と鼻を鳴らして行ってしまいます。タンパク質しか興味がないのです。

 帰省する時は、スーパーの宅配が届く前に何かあげられるよう、ちょっとした食べ物を持って行きます。冷凍した肉の切れ端とかチーズとかです。到着して散歩に出、家に帰って一段落すると、りくは「なんかお土産ないの?」と言うように様子を見に来たり、台所と茶の間を行ったり来たりするので、「なんか食べる?」と言って、ドッグフードに混ぜてあげます。普段食べている物とそんなに違わないのですが、ちょっとでも目先が変わった物をもらうのはうれしいようです。これで、「姉ちゃん」=「美味しい物を持って来てくれる人」が定着するのです。

 一休みしながら途中で買ったふわふわのクリームチーズパンを食べていると、りくが隣でお座りすることがあります。食べないだろうと思いながらも、「食べる?」と聞いて少しだけちぎってあげてみると、たまに食べます。こういう時はどういう具合か2口、3口と食が進み、半分近く食べられてしまうこともあります。美味しいパンはわかるのか? こんなふうに自分が食べている物を分けてあげる時には食べるかどうか聞いてからあげるのですが、以前ヘルベルトは「りくに『食べる?』って聞く?」と笑っていました。「犬なら何でも食べるだろう」との含意だったのでしょうが、りくはそんじょそこらの犬とは違います。タンパク質以外は基本食べないので、無駄にならぬよう聞いているのです。

 帰省中は私がりくの栄養士兼食事担当ですが、慣れてくるとりくはその味に飽きるらしく、美味しい物だけ食べてさっと行ってしまったり、皿の中を一瞥して「またトリか~」と言うようにふっといなくなったりします。これにはさすがにイラっとして、「そんな贅沢言う子は食べなくていい。世界にはビアフラの子供たちみたいに(いつの時代だ?)食べられない子もいるんだよ」と叱るのですが、数分後に美味しい物が追加されたかどうか平気の平左で皿を見に来るのですから、りくには勝てません。そのマイペースぶりに振り回されています。