2021年6月16日水曜日

「ローカル局」

  今年の桃はだめらしいと、帰省して知人に聞きました。春先に急に暑いくらいになったと思ったら、その後霜が降りて花がやられてしまったのです。こういう時は一晩中桃の木の下で火を焚いて温めてやらなくてはならないのですが、あまりに突然の冷え込みで不意を突かれたのでしょう。だいぶ前に農家の方が「可哀そうなことをしました」と言って肩を落としていたのをテレビで見ました。今年はあまり桃が食べられないかも・・・と私も心配ですが、農家の方々のお力落としには比すべくもありません。

 先日帰省して夕方のニュースでも見ようとテレビをつけると、若い女性が木に登ってチェンソーで枝を伐採している場面で、思わず引き込まれてしまいました。途中から見たので県内のどこの話かわかりませんでしたが、その二十歳そこそことしか思えない女性は林業を志して先輩方に教わりながら学んでいるようでした。周囲の評価は「非常に真面目」とのことで、男社会で奮闘する彼女を温かく見守る雰囲気が感じられました。彼女は口数の少ない人でしたが、印象的だったのは「3Kと言われる林業だが、そう思ったことはない」ということと、「未来に残せるものがあるとしたら森しかないと思う」と言っていたことでした。くどいようですが、見た目はまだ少女と言っていいような若い女性です。その人がすでに「未来に何かを残す」ということを考えているのです。途中、原発事故の話がちょっと入ったので考えてみると、その当時彼女はおそらく小学生、ひょっとすると中学生になっていたかどうかという年齢だったでしょう。この十年間様々なことがあったに違いありませんが、あのような未曽有の体験はこんなにも人を成長させてしまうのかという思いに打たれました。

 また別な折に見た報道では、会津地方で酒造りに関わっているご老人の話を伝えていました。会津は放射能はほとんど関係なかったのですが、やはり甚大な影響を受けたとのことで、東電に対して厳しい批判をしていました。その方の憤りは補償がなされていないことではなく、補償できようもないシステムを平然と稼働させていたことにありました。無理もありません。福島原発の電気は1ワットも福島では使われていなかったのですから。「これからはエネルギーも地産地消でしょ?」と確信をもって問いかけており、私は思わずテレビに向かって「おっしゃる通りです」と答えていました。

 こういった放送が他の都道府県で放映されたり、何らかの形で伝わったりすることはほぼ無いのでしょう。しかし、これらはすでにある情報を垂れ流しているのではなく、地域に住み、地域で起きているトピックを「伝えなければ」と思った人が、自分で取材して報道していることに大きな意味があります。いろいろな立場で地域に根差して一生懸命働いている人を見ると、心から応援したいと思わされます。