2019年10月8日火曜日

「紅春 145」


 柴犬人気は海外にも広まっているようで、先日、子犬を飼い始めたオランダの家族の放映を見ました。その家に引き取られた子は、一緒に生まれた兄弟の中でもひときわ大人しく、他の兄弟が活発なのに対して、ケージの隅でお座りしている様子が「あ、りくと同じだ」と思いました。


 オランダでは赤ちゃんが生まれると、窓のところにその子の名前を知らせるデコレーションをするとのことですが、引き取った家でも子犬の名前を知らせるバルーンを飾っていました。家の中も歓迎一色の状態なのですが、肝心の子犬は環境の違いに固まってしまい、全然動こうとしませんでした。「そうそう、りくもこんなふうだった」と思い出しましたが、飼い主さん(二十歳前後の息子が二人いるお父さんでした)は、「動かない、ドッグフードを食べない、元気がない」の三重苦に平静さを失っていました。撮影されているせいだと思ったらしく、この日の撮影は中止を言い渡されました。いや、そうじゃないのです。思わず「柴の赤ちゃんでおとなしい子は環境に慣れるのに時間がかかります。最初はみんなこうだから、心配いりませんよ」と声を掛けてあげたくなりました。このお父さん、心配でケージのわきで一緒に寝たらしく、翌日は目の下にクマができていました。ああ、いい人だなあ。

 翌日、外に連れ出してもやはり動かず・・・そうそう、りくも散歩ができるまでに時間がかかったなあと思い出し、こうやって少しずつりくもいろいろなことを学んでいったんだ、二階に上がれるようになったのはなんと9年目だったっけ…と何だかしんみりしました。そのうち慣れてきたようで、動き回れるようになったところで番組は終わりましたが、飼い主さんが犬と一緒に一喜一憂するような愛情にあふれた方だったので、「いい家にもらわれて幸せだねえ」と、穏やかな気持ちになれました。

 りくは散歩のときは元気に歩いていますが、帰ってくると素直に家に入って休むことが多くなりました。疲れた後は正体もなく寝ています。もうすぐ13歳になります。人間なら八十歳くらいですから、一日のほとんどを寝て過ごすのも無理はありません。赤ちゃんだった日から長い年月がたちました。この歳まで元気でいてくれて感無量です。