2015年1月29日木曜日

「紅春 58」


 霧雨の中、土手をりくと歩いていた時、
「ちょっとすみません。うちの犬見なかったでしょうか。」
と年配のご婦人から声をかけられました。聞けば昨日、近所で立ち話をしていたら、気の合わない犬が来たので逃げてしまったとのことでした。
「それは心配ですね。どんな犬ですか。」
とお聞きすると、白い柴の雑種でりくより少し大きい犬とおっしゃいましたが、散歩の時間帯が違うのか心当たりがありません。雨の中合羽姿で普段のコースを探していたその方は、肩を落としていらしゃいました。お名前とだいたいのお住まいをお聞きし、もし何かわかったらお知らせすることを約し別れました。その後もそれらしき犬に出会うことはありませんでしたが、そこは犬ですからさすがにもう家にもどっているのではないかと思います。

 ある日散歩から戻り、いつものように「まだ家に入らない。」と言うりくを外につないでおき、1時間ほどで家に入れようとして愕然としました。つないだつもりでつないでなかったのです。引き綱の端の輪っかを通してから留め金をしたつもりでしたが、輪っかが通っていなかったので引き綱はただ地面に落ちていたのです。りくは普段と変わりなく1時間ずっとその場におりました。つながれていると錯覚していたのかもしれませんが、おそらくりくは一人では家を離れてどこへも行けない子なのであろう可能性の方が高いと思いました。