父が亡くなったということをりくはどうとらえているのか・・・これは私にも謎です。父の強烈な記憶があるはずなのに、一見したところ寂しそうだとか物思いにふけっているような様子はありません。勤めていた頃たまに帰省する私を「長旅に出ている群れの仲間」と認識していたように、父のこともそう思っているのかもしれません。もし再び現れるようなことがあれば欣喜雀躍して歓待をすることでしょう。また逆に、ひょっとすると犬にとっては眼前の現実がすべてなのかもしれませんが、本当のところはわかりません。
りくにとって生活が変わったのは確かで、私がいないときは昼間は一人になってしまいました。東京でそれを思うと可哀そうでいてもたってもいられなくなるので考えないようにしています。兄が昼間家に戻れるときはできるだけ来るようにしているとのことですが、りくはだいたい寝て過ごしているようです。話を聞く限り、りくはそれなりに順応しているようなので、「あの子は賢いから。」と思って自分を納得させています。
私は6時前にりくと散歩に出ますが、私がいないときは散歩の時間が1時間以上遅くなります。いなくなった翌朝にはりくは階段の下で兄に「散歩に行こう。」とわんわん声をかけるそうですが、兄が布団の中で完全無視を決め込むと翌日からは兄が起きてくるまでおとなしく待っているといいます。また、昼間寝ているのでりくは夜眠くならず、夜中も散歩に連れ出しているとのこと、ご苦労様です。
私がいるとりくはべったりひっついていて、時々くんくんと甘えた声を出しながら「遊ぼう。」とか「散歩に連れてって。」とか言ってくるのですが、これも兄だけの時は兄の食事や用事が済むまでおとなしく待っているとのこと。要するに私がいるとりくは甘えきったダメ犬になるのです。りくのしつけには私がいない方がいいのかもと思うほどですが、もうこうなったら私がいる時は好きなだけ甘えさせてやろうと思います。