2014年4月19日土曜日

「懐かしの少女小説」


 先日久しぶりに本屋さんに行ったとき文庫の棚の下に平置きになった「赤毛のアン」を見つけました。このように並べてあったのは朝の連続テレビドラマの影響なのかもしれません。「へえーっ。」と驚いたのは文庫が出ていることそれ自体と、これを文庫で読む人がいるのかということでした。

 少女小説という言葉があるのかどうか知らないのですが、「赤毛のアン」は日本ではかなり特殊な位置にある本だと思います。小学校からおそくとも中学校までのごく限られた時期に、女子のみによって読まれ、しかも激しくのめり込む一部の人がいる一方で、大多数の人は読んだことさえあからさまに口にしないといった状況だったように記憶しています。

 それもそのはず、この本の主題はずばり「コンプレックス」なのですから。この本に心酔してシリーズをたどっていったり、プリンスエドワード島に憧れていた友達のなんと天真爛漫だったこと。大多数の人はコンプレックスと向き合いたくはないのです。人生で最もありのままの自分と向き合いたくない時期ですし、自分の短所はいやというほどわかっているのですから。

 「赤毛のアン」で私が覚えているのは「マシューっていいおじさんだったよな。」ということくらいです。今の小学生もこの本を読んでいるのでしょうか。そうだとしても、色彩豊かなイラストの入ったハードカバーの本でしょう。あの文庫版はきっとかつての少女たちのために用意されたものだと思いました。